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■管長日記「明治時代の円覚寺」
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■note
https://note.com/engakuji/n/n62d1cb723c2a
 
 
最後に一日のはじまりを整える、呼吸瞑想がございます。
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先日かまくら寺子屋の朗読発表会で、池田雅之先生が、ご自身が訳された『日本の面影』(新編 日本の面影 II (角川ソフィア文庫)ラフカディオ・ハーン (著), 池田 雅之 (訳) )の一部を読んでくださいました。

今回は、鎌倉大仏のところを読んでくださったのでした。

小泉八雲が明治二十三年(1890年)に、日本に見えて最初横浜に滞在して、鎌倉を訪れているのであります。

そこには、明治二十三年に見た鎌倉の姿が描かれています。

まず池田先生は、

「寺の境内に入っても、露座のまま座しておられる大仏様のお姿はー大仏様のお堂は、久しい以前に流されてしまったー 見えてこない。 芝生に沿って、私たちは石畳の小道を進んで行く。大仏様は木陰にお隠れになっているのだ。」

という一節を読まれて、鎌倉の大仏様も、昔は、奈良の大仏様のように、大きな建物の中に鎮座されていたとお教えくださいました。

鎌倉の大仏については、よく分からないことが未だに多いのです。

いろいろの調査から大仏殿があったことは確かなのです。

幾度も地震などに襲われて、応安二年(1369年)の倒壊以後には、大仏殿が再建された形跡は見出されていないのであります。

更に『日本の面影』にある

「それから、境内の小道を曲がると、いきなり、大仏様のお姿がぬっと姿を現した。

今まで幾度となく大仏様の写真を見た人でも、初めてその実物を目の当たりにしたら、心底驚くに違いない。

百メートル近く離れた所から見ても、まだまだ近すぎる感じがするであろう。

私は、大仏様の全貌をじっくりと眺めようと思い、三十四、五メートルほど後ずさって見てみた。ところが、私のうしろについてきた車夫は、あたかも私が大仏様が生きていると思って恐がっているのだと思いこみ、笑いころげる始末であった。」

の一節を読んでくださいました。

大仏さまというのは、あれだけ大きいのに、お寺の外からお姿を拝むことはできないのであります。

まわりの木々に囲まれているのであります。

高徳院の境内に入ってはじめて拝めるのであります。

更に小泉八雲は

「大仏様がたとえ生きた存在であっても、誰も恐がりはしないであろう。

大仏様の柔和で夢見るような無心の表情-容姿のすみずみにまで現れている無限の安らぎは、誰もが心惹かれる美しさに満ちている。

しかも、予測に反して、この巨大な大仏様に近づけば近づくほど、その魅力はいよいよ増してくるのである。

大仏様の気高く美しいお顔と半眼の眼差しを仰ぎみていると、青銅のまぶたは子どもの眼差しにも似て、じっとこちらを優しげに視つめておられるように思われる。

そしてこの大仏様こそ、日本人の魂の中にある優しさと安らかさのすべてを象徴しているように感じられる。」

と書かれています。

池田先生も、大仏様の柔和なご表情について語ってくださいました。

そして更に

「日本人の思惟が、こうした巨大な仏像を生み出すことができたのだ、と私は考えている。

大仏様の美しさ、気高さ、この上ない安らかさは、それを生み出した日本人のより高い精神的生活を反映している。

大仏様の縮れ毛や仏教上の象徴的な印が示しているように、インドの仏像からの影響は見られるものの、その技法は日本的なものである。」

と説かれています。

池田先生は、今ウクライナで戦争が起こり、パンデミックに見舞われ、人々が不安になっている時こそ、この大仏様の安らかさを生み出した日本人の素晴らしい精神性を大事にしたいとお話くださったのでした。

『日本の面影』には、大仏様の前に円覚寺を訪ねている記述がございます。

そこには明治時代の円覚寺の姿が描かれているのです。

円覚寺の山門のところを引用してみます。

「この山門も、実に見事なものである。

屋根は大きく反り返り、巨大な切妻がついた二階建ての立派な外観を呈している。
この山門は、四百年以上の長きにわたって風雪に耐えてきた。

しかし、そんなことは微塵も感じさせない。

その重厚で複雑な造りは、白木の円柱と大梁の巧みな組み合わせによって支えられている。

その山門の巨大な軒先には、たくさんの鳥たちが巣を作っており、屋根の上から聞こえてくる鳥たちのさんざめきは、まるで水が流れ落ちる音のように響いてくる。」と書かれています。

四百年というのは誤りで、天明五年(1785)に再建されていますので、この時にはまだ百年ほどの歴史なのであります。

そのあとに、関東大震災で倒壊してしまった仏殿の様子について書かれています。

「この山門を過ぎ、さらに樹齢千年を超える鬱蒼とした木々の間を通って、幾重もの幅広い石畳を登ってゆく。

すると、美しい二基の石灯籠のある仏殿へと出る。

仏殿の建物はさほど大きくはないが、さきほどの山門によく似ている。」

と書かれていますが、二基の石灯籠は今もございます。

更に「仏殿の入口の上には、「大光明宝殿」と書かれた扁額が掛っている。」

とありますが、この扁額は、後光厳天皇から賜ったもので、今も掲げられているものです。

更に

「しかし、お堂は厳重な格子の柵で仕切られており、誰も中に立ち入ることは許されない。

私は、かすかな光を頼りに、格子のすき間から中をのぞき込んでみる。

まず、大理石を敷き詰めた床が見え、次に高いくすんだ屋根を支えている太い木造の円柱が立ち並ぶ廻廊の奥まった所に、 金糸の衣に身を包み、黒みかかったお顔付の釈迦如来像が、周囲十二メートルほどもある巨大な蓮の花の上に鎮座しているのが、垣間見える。」

と書かれています。

今では、仏殿の内部に入ってお参りすることができますが、これは私が管長に就任してから開放したことであります。

長らく中には入れなかったのでした。

しかし小泉八雲はその中をのぞいてみて、宝冠釈迦如来が鎮座なさっているのを拝んでいたのでした。

この大きな素晴らしい仏さまを間近で拝んでもらいたいと思って、仏殿の中まで入って拝めるようにしたのでした。

そこから

「さらに石畳を登ってゆくと、私たちがすでに通過してきた山門よりは小ぶりな門ではあるが、もう一つの門に辿り着く。

その小門には、どんな彫り師も彫ることのできないような数多くのぶきみな龍が彫られている。

その羽の生えた龍群は、水中から竜巻となって舞い昇ったり、そこから舞い降りたりする構図のもので、もう今日ではそれらを彫れる彫り師はいないだろう。

左の門扉の壁に彫られた龍は、口を閉ざしたままだが、右の門扉に彫られた龍は、口元をかっと開き、威嚇的である。

この左右の二匹の龍は、仏陀に仕える二頭の唐獅子と同じように、雄と雌のつがいである。」

と書かれています。

これは今の勅使門のことです。

こういう文章を書かれた小泉八雲の感性も素晴らしく、池田先生の訳文もまた素晴らしいのです。

これは明治二十三年のことですから、この翌年にかの鈴木大拙先生が円覚寺に参禅に来られているのです。

これは大拙先生もご覧になった円覚寺の姿だと思うと感慨深いものであります。

寺にいると、こういう長い歴史の中に身を置いているのだと感じるのであります。

移り変るものもありますが、こうして長い歴史の中にいるのだと感じると、心は安らぐものであります。
 
 
横田南嶺
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